アレルギー性鼻炎と漢方

花粉症は、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどを呈するアレルギー性の疾患です。西洋医学に基づいた一般的な治療では、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤などを用いて治療を行います。

しかしこれらの薬剤を用いて治療した場合には、眠気を催したり、注意力の気間等の副作用が出たり、また思った通りの効果が得られないこともあります。このことから、花粉症に関して半ば諦めを抱いている人も多いです。

このような人には漢方薬がお勧めです。漢方薬は花粉症に対して効果があることが多く、副作用がないので、ぜひ試してみる効果があるでしょう。

以下に花粉症の漢方治療の方針を書きますが、まずは主要な症状がどのようなものかを 把握する必要があります。症状として挙げられるものは「くしゃみと鼻水」「鼻づまり」「目の痒み」などが挙げられ、これらの複数または全てを呈する事もあります。

くしゃみや鼻水が止まらない場合

くしゃみや鼻水が止まらないという症状は、漢方では水毒が原因とされています。水毒とは水分の代謝障害のことであり、これによって鼻水やくしゃみが引き起こされているのです。これを改善するためには小青龍湯という漢方薬が使われます。この漢方薬には水はけを良くする麻黄という生薬が水はけを良くすることで、症状の改善を図ります。この麻黄という生薬にはエフェドリンという物質が中枢性に働きかけているためであり、このため、眠気をもよおす事はありません。

くしゃみをする女性
しかし、同時に胃腸虚弱の人や血圧の高い人、不眠傾向の人が用いる時には注意が必要です。

麻黄による影響で小青龍湯を用いることが出来ない場合には、小青龍湯ではなく、苓甘姜味辛夏仁湯が用いられます。苓甘姜味辛夏仁湯は、本来は小青龍湯が用いたいけれども副作用が気になる時に使います。
そして、上記と同じく鼻水が止まらないという症状がありながら、冷えは強い場合には、麻黄附子細辛湯を用います。これは麻黄、附子、細辛という、体を温める働きをもった3種類の生薬によって作られる漢方薬です。この漢方薬は、体に合う人にとっては、飲んですぐに体がぽかぽかとしてくることでしょう。

鼻づまりを起こす場合

アレルギー性鼻炎の女性

アレルギー性鼻炎の症状として、鼻づまりを起こす人もいます。鼻づまりが改善されなければ呼吸がしづらく、寝苦しい夜を過ごすことになったりと、非常にうっとうしいものです。

鼻づまりの症状では、鼻粘膜の充血や鬱血が見られるため、漢方ではこれを微小循環障害と捉えられます。こういった症状に対しては葛根湯加川芎辛夷と柴葛湯加川芎辛夷が用いられます。特に柴葛湯加川芎辛夷は、中長期の鼻詰まりに顕著な効果を示すことが多くあります。
このどちらにも用いられている辛夷という生薬は、モクレン科の木筆の蕾を乾燥させたもので、これが鼻の粘膜の分泌物を抑える働きがあるため、鼻詰まりを改善する事が出来るのです。

目がかゆい場合

目がかゆい女性

目がかゆいという症状がある時には、基本的には目を洗浄し、眼科で処方される点眼薬での治療がメインとなります。漢方治療では、抗アレルギー作用のある小青龍湯を用います。
小青龍湯は鼻水だらだらと目のかゆみを同時に改善してくれる優れ物なのです。



全ての症状がある場合

くしゃみ・鼻水が止まらない、鼻づまり、目のかゆみ、これらの症状が全部有ると言う人もいます。このような場合には、それぞれの症状の程度を見極めて、小青龍湯を用いるか柴葛湯加川芎辛夷を用いるか判断します。

基本的には小青龍湯が第一選択薬になります。抗アレルギー作用をもっているこの漢方薬は、基本的にどの症状にも効果が見られるからです。小青龍湯を基本に処方を組み立てて行く医師は多いものです。

アレルギー体質を西洋医学でも漢方治療でも根治することはきわめて困難です。しかし、漢方によりアレルギー体質の改善は図れます。漢方では生体の反応を過剰なものから正常に近づけるように導きます。アレルギー症状が軽症から中等症までは漢方単独でも対応可能ですが、重症になると西洋薬とくに外用薬の併用が必要になります。治療戦略として、まず症状を沈静化し、ついでアレルギー体質の改善に移ります。症状のない時こそがアレルギー体質の改善のチャンスなのです。

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鼻閉型、眼球充血(赤目)型

症状がない時期の漢方治療=アレルギー体質の改善目的

患者1人1人に合った漢方処方を吟味しますので、決まったものはありません。ただ、症状がなくなると治療を続ける動機が薄れてきて、つい間が開いてしまう。そして、花粉のシーズンがくると再びお見えになるという渡り鳥のような方もおられます。できることなら、多少間が開いても症状のない時期に治療を受けていただきたいものです。

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花粉症・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎と漢方

漢方医は処方を決めるため、患者さんの全身状態を四診(視る、聞く、嗅ぐ、質問する、触れる)により把握し、局所の周辺(目・鼻とその周りの顔)を注意深く観察します。粘膜の状態は鼻にとどまらず、口腔内、咽頭、眼球結膜を、皮膚の状態も観察します。最後に精神状態の診断を加え、総合的に判断して処方決定します。アレルギー性鼻炎だからこの処方などと決められないのです。漢方専門医に相談するメリットはこの点にあります。漢方医学には長年の経験に裏付けられた体系的な理論があり、これを駆使することで漢方処方が活きるのです。花粉症・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎の漢方治療については漢方診療に経験豊かな漢方専門医にご相談ください。