耳鳴りと漢方治療

耳鳴りとは、ザーッと潮が引いて行くような音がしたり、ジーッと蝉が鳴くような音がしたり、キーンと高い金属音がなったりする症状を呈する耳鼻咽喉科疾患です。聞こえ方、音の大きさ・強さは様々です。

耳鳴りがする婦人
耳鳴りは、中耳炎のような病気から発する症状のある場合もありますが、ストレス社会の昨今では、ストレス性の耳鳴りも増えています。

耳鳴りは西洋薬ではなかなか治らないものです。しかし漢方薬には耳鳴りを効果的に改善するものもあります。耳鳴りの症状が慢性化するうちに漢方治療によって手を打つひとは多いです。

漢方では耳は腎機能・肝機能と深いかかわりがあります。

腎には広い働きがあり、生殖機能や成長発育を担い、生命活動に最も重要な場所であるとされています。虚弱体質、老化、過労、ストレスなどによって腎による耳鳴りが起きます。

また、耳の周りには肝の経絡(肝のエネルギーが通る道)があるため、自律神経の乱れなどによって耳鳴りを起こすことがあります。

耳鳴りには代表的な3つのタイプがあります。

1つ目は過度の精神的ストレスがかかったときに起こる耳鳴りです。

過度の精神的ストレスによって肝の機能が異常になると、自律神経のバランスが崩れます。この事によって耳周辺の肝経絡にも問題がおきるのです。ストレスで経絡の流れが阻害され、その結果が耳鳴りとして現れます。

現代はストレス社会ですので、ストレスを受け、抱え込んでしまいがちな現代人にストレスタイプの耳鳴りが増えています。この結果、耳鳴りの他に聴力が低下したり、鬱っぽくなったり、便秘と下痢を繰り返すなどの症状もあらわれます。

この場合、肝の流れが滞ったり遮られるために起こる耳鳴りであるため、肝の流れをよくする漢方薬が使われます。抑肝散、釣藤散が使われますが、根源的な解消をするためにはストレスの原因を絶つことでしょう。

水分代謝に異常を起こした場合にも、耳鳴りが起きます。

この原因としては、胃腸の働きが悪かったり、食生活の乱れが悪かったりすることによって引き起こされます。

水分を吸収するのは腸ですが、腸内で水分がうまく吸収できないことによって水分代謝が悪化すると、過剰に吸収された水分が全身に滞ることとなり、その結果耳の働きに異常が出るのです。日本人には水分代謝が悪い人が多いため、このタイプの耳鳴りは日本人にもっとも多いものです。

このタイプの耳鳴りの症状は、蝉が鳴くような音がする、耳が詰まったような感じがする、疲れると悪化する、食欲不振になる、めまいがする、などの症状が現れます。

この耳鳴りになった時には、症状や原因を見た上で、漢方薬を処方します。お酒の飲み過ぎで体内に余計な湿熱があれば竜胆瀉肝湯、普段から食欲不振、めまい、頭痛がある場合には半夏白朮天麻湯などを用います。

原因の改善のために漢方薬を服用すると同時に、食生活の乱れも原因となることを重視し、脂っこいもの、甘いもの、辛いものなどを食べすぎないようにすることもにも注意し、肝臓を休める時間も設けたいものです。

腎機能が低下したことも耳鳴りの原因となります。

休息をとる女性

虚弱体質、過労、ストレス、加齢などによって腎機能の働きが弱くなれば耳鳴りが起きますので、高齢の方に多いタイプです。耳鳴りの音は小さく、静かな環境で耳鳴りが気になります。音は蝉が遠くで鳴いているような音がします。過労によって耳鳴りが悪化しますが、関節が痛んだり、めまいがしたりします。

このタイプの耳鳴りを改善するためには、過労が大きな原因となるためまずは休息をとることです。代表的な漢方薬では、六味丸、六味丸に柴胡と磁石を足した耳鳴丸などがあります。

耳鳴りは西洋薬で確実に改善することはできません。耳鳴りになった時には漢方薬を服用しましょう。慢性化する前の早めの治療が大切です。