のどがつまった感じがする、声が出にくい、声が裏返る、このような「のどが締め付けられている感じがする」という症状をひっくるめて咽喉頭異常感といいます。西洋医学では治療方法はなく、単なる精神的な問題などと解釈されて心療内科へ相談するように指示を受けたりします。しかし、漢方医学ではこのような症状を気滞といい、気の通過障害と捉えて、解決方法もあります。
「気の通過障害」と言いましたが、「気」というのは体のエネルギーのことです。気が体を滞ることなく順調に循環する事で、元気に生きられると考えられています。気が滞ると色々な症状を引き起こしますが、気の流れが喉の部分で滞ると喉の閉塞感となって現れるのです。
気は滞った部分で色々な症状を来すのです。頭ならば頭重感や抑うつ、喉ならば閉塞感、胸ならば胸のもやもや、鳩尾(みぞおち)ならばつっかえ感、腹部ならば膨満感などです。喉に感じる閉塞感のことを、漢方では、梅核気(ばいかくき)、咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)などと呼びます。
梅核気は、梅の核、つまり梅の種が喉にひっかかったような感覚のことをいい、咽中炙臠は、焼き肉が喉に詰まったような感じです。実際には何も引っかかっていないにもかかわらず、このような感覚がするのです。上述の通り気の停滞が喉で起こっているのです。
気の滞りを改善し、気の流れをよくすることで症状の改善を図ることが出来ます。治療は難しいものではありません。漢方薬の処方によって改善を図りますが、代表的な漢方薬は半夏厚朴湯です。喉の閉塞感の他、動悸、めまい、不安感、胃に不安感などを感じた人に最適な薬です。
半夏厚朴湯は半夏、厚朴、茯苓、蘇葉、生姜の5つの生薬を配合してつくられます。基本は小半夏加茯苓湯であり、これは半夏、茯苓、生姜の3つの生薬を配合してつくられる漢方薬であり、悪心・嘔吐の時に用いる胃の漢方処方です。それに厚朴、蘇葉を加えて半夏厚朴湯が出来上がるのです。そして、加えられた厚朴、蘇葉には気の流れをよくする作用があります。つまり、胃の漢方の気の流れに配慮したものが半夏厚朴湯なのです。
実は、喉の閉塞感の他にも色々な症状が併発していることがほとんどであり、むしろその他の症状に喉の閉塞感が併発するような感覚となることが多いのです。このため、半夏厚朴湯のような漢方薬が用いられることとなるのです。
なぜこのように気の滞りが原因にも関わらず気の流れの改善だけでは済まないのかというと、人体は気・血・水の3つの働きのバランスが取れて初めてうまく機能するからです。気が乱れることによって血と水にも悪影響を及ぼすこととなり、あらゆる障害が引き起こされるのです。
これは、気の乱れを放っておくとどんどん悪い症状を呈しますので、あくまで喉に閉塞感を感じたら、血や水まで乱れ始める前に、早期の受診と、治療の開始が大切となります。